入学案内 大学院 2024
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幅広い研究分野の教員がいる強み研究成果を現場につなげる存在にSeitoku University Graduate School ではなく高齢者や成人です。長く産業保健師をしていました。高齢化に伴って認知症が大きな問題になってきて、「グループホームってどんなところですか?」という相談をよく受けていたのです。それが頭に残っていて、ちょっと仕事を離れて大学院で勉強し直そうと思った時にはグループホームの研究をテーマに選びました。一方で地域保健にも携わった経験があるので、成人や子どもの健康にも興味があり、そちらにも研究対象が広がっていった感じですね。須田 私はおふたりと違って、大学からそのまま大学院へ進んで研究生活をつづけているのですが、虐待に興味を持つきっかけとなったのは、社会福祉士の資格取得のための実習でした。そこで介護をするご家族の負担の大きさを知り、「学校では、福祉はそれを受ける本人のためと教わったけれど、違うのではないか。家族の負担が大きいと虐待につながったりする。社会福祉は家族のやっていることを代替することが存在意義では」という問題意識を持ったのです。現場での問題意識が研究のスタートになることは多いし、一方でその研究を深めているうちに、隣接する分野にテーマが広がっていくこともある。ここは黒澤先生、初鹿先生と共通で、研究者に多いパターンなのでしょうね。黒澤 年2回ある修士論文の構想・中間発表には毎回参加しています。本当に研究分野が多岐にわたっていて感心しています。これはいろんな分野の教員がいるという本学の児童学研究科の特長に起因していると思います。研究を様々な視点で見られる教員がいるから、幅広い課題に対応できる。須田 教育とか、心理とか、福祉とか学問にはいろいろな分野があるわけですけど、児童学となると児童に関わることすべてが含まれるんですよね。切り分けられない。黒澤 昔はひとつの分野で問題を解決できたのかもしれませんが、今はもっと複雑ですよね。例えば算数ができない子どもがいたら、昔はその子に理解させるための教授法を研究すれば対応できていたのかもしれない。でも、実はその子には発達障害があるの教授黒澤 寿美▶専門・研究分野小学生が算数の問題を解くときの思考過程に着目した研究、幼小連携、幼児期の学びと児童期の学びのつながりについての研究。かもしれないし、ヤングケアラーで勉強している余裕がないのかもしれない。今はそうした、子どもの立場に立って考えるためのいろいろな視点が必要になる。多岐にわたる分野でそれぞれに高い専門性を持った教員がいる聖徳は、そうした視点を身につけるのに適していると思います。初鹿 幅広い分野に対応できるから、幅広い分野の社会人が入学してくる。私はそうした院生から新たな視点を教えていただくことも多いですね。発達障害のスクリーニングについて研究している院生がいるのですが、最初はピンと来ませんでした。自分が母子保健に関わっていたのはずいぶん昔だということもあり、「スクリーニングの後が大事なのでは?」と思っていたのですが、知り合いの現役保健師に聞いてみたら、「スクリーニングの結果を親御さんに納得していただくためには、保健師の力量が大事」と言われて。その院生は保健師なので、現場の視点でそこに気づいたのですね。現場には時代の最先端となる課題がある。教員として、その問題意識を研究につなげられるようにしっかりとサポートしていきたいと思います。須田 「最先端児童学」が何かという問いに対する答えはひとつではないと思うけれど、こうした複雑な時代に対応するために複数の視点を持つ、というのも答えのひとつではないでしょうか? 学問はいろいろな分野に分かれて広がっていったけれど、一周回って、分野の枠を超えた学際的な視点を持つ研究をすることが最先端の児童学だ、とも言えるのかもしれません。准教授初鹿 静江▶専門・研究分野 子どもの保健、母子保健、子どもの健康と安全に関する研究。―通信制で学ぶメリットはどんなところにあるとお考えですか?黒澤 自分自身は、通信制だから仕事と両立できたと思っています。当時は愛媛県に住んでいて、周囲には仕事が終わった後に学べる大学院がなくて、聖徳の通信教育課程を選びました。私の担当論文指導教員は学生を集めてゼミのようなことをしてくださったので、月に1回、松戸に通っていました。仕事との両立は大変ではありましたが、いろいろなバックボーンのある方々と一緒に学べたことでとても視野が広がりました。私は公立学校の教員を20年務めたので、現場の先生の大変さをよく知っています。現場の先生たちのために、研究成果を現場とつなげる役割になりたいという強い思いがあったことも、研究をつづけられた理由だと思います。須田 聖徳で学ぶ多くの院生が、問題意識という「研究の種」を持っていますよね。問題を抱えてモヤモヤとしているかもしれない。それが大学院に入って学んでいると、担当教員が「こんな先行研究がある」と教えてくれるし、研究環境が整っているので自分でも調べられる。そうすると、徐々に問題のありかがハッキリしてくるはずです。疑問を担当教員にぶつけ、フィードバックをもらいながら課題解決に向けて進んでいくのが大学院という場所ですよね。黒澤 自分が現場で感じている課題は、自分だけのものではなく、他にも同じような悩みを持っている人がいる。自分が研究することで、そうした人たちの悩みも解決できる。研究は楽しいし、社会全体のためにもなるので、現場で課題を感じている方には大学院進学をお勧めしたいですね。初鹿 大学院というとハードルが高いと感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、自分の経験から言うと、やればできるものです。今まで働いてきた分野を深めるのもいいし、新たな分野に挑戦するのもいい。通信制なら仕事しながらでも、どこに住んでいても学べるので、定年後に今までの仕事を総括してみたい方や、新たに学びを始めたい主婦の方も、ぜひ思い切って挑戦してほしいと思います。※教員プロフィールの詳細は、9〜10頁をご覧ください。准教授須田 仁▶専門・研究分野保育者のための社会福祉、被災地におけるソーシャルワーカー支援、児童虐待、ダブルケア。02

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